健康経営KPIの具体例と設定方法|成果を見える化する指標を解説
健康経営に取り組んでいるものの、「施策の効果が分からない」「どのような指標を設定すればよいのか分からない」と悩んでいる企業も少なくありません。
健康診断やストレスチェック、健康セミナー、運動施策などを実施しても、実施したこと自体が目的になってしまうと、健康経営によって何が改善されたのかを判断することができません。
そこで重要になるのが、KPI(重要業績評価指標)の設定です。
健康経営では、自社の健康課題を見える化したうえで、その課題に合ったKPIを設定し、施策によって従業員の健康状態や行動、生産性などがどのように変化したのかを継続的に確認することが重要です。
本記事では、健康経営で活用できるKPIの具体例から、KPIの設定方法、成果につなげるためのポイントまで分かりやすく解説します。
目次
1.健康経営におけるKPIとは
1-1.KPIは健康経営の成果を確認するための指標
KPIとは「Key Performance Indicator」の略で、日本語では「重要業績評価指標」と呼ばれます。
健康経営におけるKPIは、健康施策によって従業員の健康状態や行動が改善しているか、その結果として働きやすさや生産性などに変化が生まれているかを確認するための指標です。
例えば、
- 健康診断受診率
- 再検査・精密検査受診率
- 運動習慣者割合
- 喫煙率
- 高ストレス者割合
- プレゼンティーイズム
- アブセンティーイズム
- 有給休暇取得率
などがあります。
ただし、これらすべてをKPIとして設定すればよいわけではありません。
自社が改善したい健康課題に合わせて、必要な指標を選ぶことが重要です。
1-2.KPIを設定することが目的ではない
健康経営では、「健康診断受診率100%」「健康セミナー参加率80%」など、分かりやすい数値目標を設定することがあります。
もちろん、こうした指標も重要です。
しかし、
「健康診断を100%受診した」
「健康セミナーに多くの従業員が参加した」
というだけでは、従業員の健康課題が改善したかどうかまでは分かりません。
例えば、運動セミナーの参加率が高くても、実際に運動習慣のある従業員が増えていなければ、施策の見直しが必要かもしれません。
そのためKPIは、施策を実施したかどうかだけでなく、その結果どのような変化が起きたのかを確認できるように設定することが大切です。
2.健康経営で活用できるKPIの具体例
健康経営のKPIは、大きく分けると、
①取り組み状況を見る指標
②健康状態・行動の変化を見る指標
③仕事・経営への影響を見る指標
という3つの視点で考えると整理しやすくなります。
2-1.取り組み状況を見るKPI
まずは、健康経営の施策が従業員に届いているかを確認します。
代表的なKPIには、
- 健康診断受診率
- 再検査・精密検査受診率
- ストレスチェック受検率
- 健康セミナー参加率
- 保健指導実施率
- 健康相談利用率
- 健康施策参加率
などがあります。
これらは施策の実施状況や参加状況を把握するために有効です。
例えば健康診断で有所見者が多いにもかかわらず、再検査受診率が低ければ、健康診断を実施するだけではなく、その後の受診勧奨やフォローを強化する必要があります。
2-2.健康状態・行動の変化を見るKPI
次に確認したいのが、従業員の健康状態や生活習慣が実際に変化しているかです。
例えば、
- 運動習慣者割合
- 喫煙率
- 睡眠で十分な休養が取れている従業員の割合
- 適正体重者割合
- 生活習慣改善率
- 高ストレス者割合
- 健康診断有所見率
などがあります。
例えば、
課題:運動不足の従業員が多い
↓
施策:ウォーキングイベントを実施
↓
KPI:運動習慣者割合
↓
結果:運動習慣者が増えたかを確認
というように、健康課題とKPIを結び付けます。
2-3.仕事や経営への影響を見るKPI
健康経営では、健康状態だけでなく、健康課題が仕事へ与えている影響も確認することが重要です。
代表的な指標として、
- プレゼンティーイズム
- アブセンティーイズム
- 欠勤日数
- 休職者数
- 離職率
- エンゲージメント
- 有給休暇取得率
などがあります。
特にプレゼンティーイズムは、出勤しているものの心身の不調によって本来のパフォーマンスを十分に発揮できていない状態を把握するための指標です。
健康経営を「従業員の健康づくり」で終わらせず、企業の生産性向上につなげるためには、こうした指標も合わせて確認することが重要です。
3.健康課題別に見るKPIの具体例
KPIは、自社の健康課題によって変わります。
3-1.生活習慣病が課題の場合
例えば、健康診断から生活習慣病リスクが高い従業員が多いことが分かった場合には、
- 健康診断受診率
- 再検査・精密検査受診率
- 保健指導実施率
- 運動習慣者割合
- 喫煙率
- 適正体重者割合
- 健康診断有所見率
などをKPIとして設定できます。
3-2.メンタルヘルスが課題の場合
ストレスチェックや従業員アンケートから、メンタルヘルスの課題が見つかった場合には、
- ストレスチェック受検率
- 高ストレス者割合
- 健康相談利用率
- 欠勤・休職者数
- プレゼンティーイズム
- エンゲージメント
などが考えられます。
高ストレス者割合だけを見るのではなく、職場環境や働き方との関係も確認することが重要です。
3-3.睡眠不足が課題の場合
睡眠不足が多い場合には、
- 睡眠で十分な休養が取れている従業員の割合
- 長時間労働者割合
- プレゼンティーイズム
- 欠勤状況
- 従業員アンケート
などを確認します。
睡眠について情報提供するだけではなく、長時間労働など職場側に原因がないかも確認します。
3-4.仕事と介護の両立が課題の場合
従業員の高齢化に伴い、親などの介護をしながら働くビジネスケアラーへの対応も重要になっています。
例えば、
- 介護に関する従業員アンケート
- 介護支援制度の認知率
- 介護相談窓口の利用状況
- 介護休業・介護休暇等の利用状況
- プレゼンティーイズム
- 離職状況
などを確認する方法があります。
制度利用率を上げることだけを目的とせず、介護をしながらでも働き続けられる状態になっているかを見ることが重要です。
4.健康経営KPIの設定方法
STEP1.自社の健康課題を見える化する
KPIを決める前に、まず自社の健康課題を把握します。
活用できるデータには、
- 健康診断
- ストレスチェック
- 従業員アンケート
- 勤怠データ
- 有給休暇取得状況
- 欠勤・休職状況
- プレゼンティーイズム
などがあります。
例えば、
「40代以上で生活習慣病リスクが高い」
「特定部署で高ストレス者が多い」
「睡眠不足による生産性低下が考えられる」
など、具体的な課題まで整理します。
KPI設定の前提となるのが、健康課題の見える化です。
STEP2.改善したい状態を決める
健康課題が分かったら、「どのような状態に改善したいのか」を明確にします。
例えば、
現状
運動習慣のある従業員が少ない
目指す状態
日常的に運動する従業員を増やす
というように整理します。
「健康セミナーを開催する」という施策を目標にするのではなく、従業員にどのような変化を起こしたいのかを考えることがポイントです。
STEP3.課題に合ったKPIを設定する
目指す状態が決まったら、それを確認できるKPIを設定します。
例えば、
健康課題:運動不足
→ KPI:運動習慣者割合
健康課題:再検査を受けない従業員が多い
→ KPI:再検査・精密検査受診率
健康課題:高ストレス者が多い
→ KPI:高ストレス者割合
健康課題:体調不良による生産性低下
→ KPI:プレゼンティーイズム
というように設定します。
一つの健康課題に対して多くのKPIを設定するのではなく、改善状況を確認しやすい指標に絞ることも重要です。
STEP4.目標値と確認時期を決める
KPIを設定したら、目標値と確認する時期を決めます。
例えば、
「再検査受診率を○%から○%へ改善する」
「運動習慣者割合を1年間で○ポイント改善する」
などです。
ただし、他社の数値をそのまま目標にする必要はありません。
自社の現在値を基準として、現実的な改善目標を設定することが重要です。
STEP5.定期的に効果を確認する
KPIは設定して終わりではありません。
一定期間ごとに数値を確認し、
施策を実施した
↓
従業員の行動が変わった
↓
健康状態が改善した
↓
仕事のパフォーマンスに変化があった
という流れが生まれているかを確認します。
十分な改善が見られなければ、施策やKPIそのものを見直します。
5.健康経営KPIを成果につなげるポイント
5-1.「実施した数」だけをKPIにしない
健康セミナーの開催回数やイベント参加人数は分かりやすい指標ですが、それだけでは健康課題が改善したか分かりません。
例えば、
セミナー参加率
+
生活習慣の変化
+
健康状態の変化
というように、取り組みから結果までを確認できる指標を組み合わせることが重要です。
5-2.健康課題と経営課題をつなげる
健康経営では、健康指標だけを見るのではなく、
- 生産性
- エンゲージメント
- 欠勤・休職
- 人材定着
などとの関係も確認します。
例えば、
睡眠不足
↓
集中力低下
↓
プレゼンティーイズム増加
↓
生産性低下
という関係が見えてくれば、睡眠対策を単なる健康施策ではなく、経営課題への対策として位置付けることができます。
5-3.継続的に定点観測する
KPIは一度だけ測定するのではなく、同じ指標を継続的に確認することが重要です。
健康診断やストレスチェック、従業員アンケートなどを定期的に実施し、前年や施策実施前との変化を確認します。
継続してデータを蓄積することで、
「どの施策に効果があったのか」
「どの健康課題が改善していないのか」
が分かるようになります。
健康課題の見える化 → KPI設定 → 施策実施 → 効果測定 → 改善
というサイクルを継続することが、成果につながる健康経営の基本です。
FAQ
Q1.健康経営ではどのようなKPIを設定すればよいですか?
健康診断受診率、再検査・精密検査受診率、運動習慣者割合、喫煙率、高ストレス者割合、プレゼンティーイズム、アブセンティーイズムなどがあります。ただし、すべてを設定するのではなく、自社の健康課題に合わせて選ぶことが重要です。
Q2.健康経営のKPIは何個くらい設定すればよいですか?
一律に適切な数が決まっているわけではありません。多く設定しすぎると管理が目的になりやすいため、自社が優先して改善したい健康課題を明確にし、その変化を確認できる重要な指標に絞ることをおすすめします。
Q3.KPIと健康経営の目標は何が違いますか?
目標は「どのような状態を実現したいのか」を示すもので、KPIはその目標へ近づいているかを確認するための指標です。例えば「従業員の運動習慣を改善する」が目標であれば、「運動習慣者割合」がKPIになります。
Q4.健康経営のKPIはどのくらいの頻度で確認すればよいですか?
指標によって異なります。健康診断のように年単位で確認するものもあれば、勤怠や施策参加状況など、より短い間隔で確認できるものもあります。重要なのは同じ指標を継続して定点観測し、変化を把握することです。
Q5.中小企業でも健康経営のKPIを設定できますか?
はい。すでに実施している健康診断やストレスチェック、勤怠管理、従業員アンケートなどを活用できます。最初から多くの指標を管理するのではなく、自社の重要な健康課題に関係するKPIから始めると取り組みやすくなります。
まとめ
健康経営のKPIは、施策を実施したことを確認するためだけのものではありません。
重要なのは、
健康課題を見える化する
↓
改善したい状態を決める
↓
課題に合ったKPIを設定する
↓
施策を実施する
↓
健康状態や行動の変化を確認する
↓
生産性などへの影響を確認する
という流れをつくることです。
健康診断受診率やセミナー参加率などの「取り組み状況」だけでなく、運動習慣、高ストレス者割合などの「健康状態・行動」、さらにプレゼンティーイズムや欠勤・休職などの「仕事への影響」まで段階的に確認することで、健康経営の成果を見える化しやすくなります。
KPIを設定することを目的にせず、自社の健康課題を改善するために必要な指標を選び、継続的に定点観測することが大切です。
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